労働者派遣事業申請の監査証明・合意された手続

公認会計士の仕事としてときどき相談を頂くものとして、労働者派遣事業申請の監査証明・合意された手続があります。どのようなお客様が相談に来られるかといいますと、会社として派遣事業をやりたい又は既に実施しているのだけれども、決められた資産要件を満たさないために許可がおりない会社になります。労働者派遣事業や有料職業紹介事業は厚生労働省の管轄となっていまして、求職者と求人者を守るために事業を始めるに当たっての要件が厳しく定められています。その中の会社としての安全性を担保するための基準が資産要件でして、下記のような基準となっており全て満たす必要があります。

まず、前年度末の決算書において、上記資産要件を満たす場合には、監査証明書の取得は不要となります。一方で、もし前年度末の決算書において資産要件を満たさない場合、そのままでは派遣事業ができなくなってしまいます。そこで、当期中において資産要件を満たすような手当(増資、銀行や社長からの借入等)を行い、当期中の任意の月で仮決算を組んだ上で公認会計士による監査又は合意された手続き(更新の場合)を受ける事で、決算月でなくとも労働局による審査を受けることができることとされています(事後申立て)。

 

ここで、監査証明と合意された手続きの違いは何になるでしょうか。監査証明とはいわゆる公認会計士による監査のことをいいまして、財務諸表全体を対象として財務諸表が適正である事を保証するものとなります。一方、合意された手続は事前に相手と合意した作業のみを実施し、その実施結果を報告するものです。一見似ているように見えますが、両者には大きな違いがあります。もっとも本質的な違いは合意された手続きでは財務諸表全体が適正かどうかという結論を表明しないという点でして、適正であることを保証する会計監査とは大きく異なります。ただ、公認会計士が実際に行う手続きは深度の違いこそあれ同じような内容となります。そのため、監査を受ける側としてはそれが監査なのか合意された手続きなのか、意識しないことが多いかと思います。

 

合意された手続きは英語でAgreed Upon Proceduresといって、頭文字をとってAUPと略されます。自分が過去に働いていた監査法人は外資系の流れが強かったのでとにかくAUP業務が多かったことを記憶しています。例えば、海外の会社と日本の会社が50:50の合弁会社を日本に設立したとします。その合弁会社が会社法監査の要件にも当てはまらない場合、全く外部チェックがされないままの決算数値となりますので、出資している海外の会社からすると決算の信頼性に疑念が生じることとなります。そこで外部の監査が検討されるのですが、監査ですと先述のように財務諸表全体が適正かどうか確認する、というレベル感となり多少やりすぎでかつコストもかかります。そこで、出資者からの要請に基づき特定の財務諸表項目についてAUPを行うこととなるのです。

 

当社では合意された手続き、監査証明のどちらも対応致しますので、申請にお困りの方は是非ご連絡ください。なお、同じような表現としてTKCの巡回監査というものがありますが、これは公認会計士の監査とは全く別物でして、法的な用語ではなく担当者がチェックする、という意味のただの社内用語となりますので、違いにご留意ください。

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