(書類の電子保存)

最近DXブームですが、その1つとして書類のペーパーレス化があります。企業活動では契約書、請求書、領収書、見積書など様々な書類が作成されます。そして、私たち税理士事務所は左記書類から総勘定元帳や決算書、申告書を作成してお渡しするというそのほとんどが書類に囲まれた仕事のため、ペーパーレス化の影響は多分にあります。ペーパーレス化が進むことで、例えば、請求書や領収書を電子メールで受け取り紙面に打ち出さずにそのまま保存したり、紙面で受け取った請求書をスキャナで保存して原本は破棄するといったことができるようになります。これにより、請求書を会社の書庫に行って探してくるといった非効率な作業や、何年間保管すればいいのかとよく質問される大量の書類ファイルの保管から解放されることとなります。その一方、データ保存のシステムを新たに構築するための初期投資や、書類をスキャンする作業が発生し、経理部や総務部では対応に追われることになるかもしれません。

従来の電子帳簿保存法における要件はかなり厳格でして、企業が実際に利用する際には高いハードルとなっていました。たとえば税務署による事前承認が必要であったり、不正を防止するために社内で電子化した文書を定期的に2名以上の人間がチェックする体制が必要であったり、データ化して保存したあとでも一定期間は紙の原本を保存し続けなければならなかったりといった具合です。そのため実際に導入している企業は少なく、導入している中小企業の話は聞いたことがありませんでした。今回の改正によって2022年1月1日以降は①承認制度の廃止、②タイムスタンプ要件の緩和、③適正事務処理要件の廃止、④検索要件の緩和といった点で要件が格段に緩和されました。

①電子保存を導入する際に3ヶ月前までに税務署へ申請する必要がなくなりました。

②タイムスタンプとは書類が作成された日付を確認するための時刻証明で、業者に依頼して毎回コストをかけて発行するものです。領収書などをスキャナーで読み取り保存する場合に、受領者が自署した上で3日以内にタイムスタンプを付与する必要がありましたが、改正によって2ヶ月以内に延長され、要件によっては不要となりました。

③これまで電子化しても紙の原本は保管、事務処理の体制として2名以上が必要でしたが、改正によってどちらも不要となりました。

④導入に必要なシステムの機能の要件の水準が下がりました。

このように導入のバーが下がったことで大企業はコストをかけれますので今後続々と導入することとなると思われます。では中小零細企業はどうでしょうか。これまで通りで特に不自由なければ無理に現状を変えずこれまで通りで、というのが中小零細の基本的な思想で、FAXさえいまだに使われている世界です。中小零細まで電子保存を浸透させるにはよほどのインセンティブが必要かと思われますが、1つだけポイントになりそうなことがあります。それは一部の取引で電子保存が認めれるのではなく義務化される部分があるという点です。

請求書や領収書を紙で受領している場合には紙の保存のまま、もしくは紙を電子化してスキャナ保存する運用となります。そして、請求書や領収書が電子メールに添付されていた場合、これまでは請求書や領収書のPDFファイルを印刷して保存すれば問題ありませんでした。しかし今後は、電子帳簿保存法で定められた一定の保存要件を満たした電子保存が必須となります。受信したメールをそのまま保存しているだけであったり、PDFを打ち出して紙で保管することが認められなくなるのです。

大手が電子化を進めることで請求書や領収書をメールに添付する形で送ることが当たり前となり、大手と取引(ただサービスを購入するだけも含めて)する中小零細企業についても、大手が発行する請求書を保管するために電子帳簿保存法に耐えられる仕組みを取らざるを得なくなる、といったことが予想されます。そして、一度仕組みを作ってしまえば当然電子保存の方が楽なので、一気に広まるという流れです。今回のお話は会社に限らず個人事業主にも同じように該当しますので、多くの方に影響を与える改正となりそうです。

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