東京の税理士法人での勤務から地元に戻って会計事務所を開業したのが2014年3月、それから7年半が経ちました。当時、やる気はとてもありましたが、開業後の売上の見込みは全くありませんでした。それなりに貯蓄があれば余裕があったかもしれませんが、その頃の銀行残高を見返してみると20万円ほどでした。お金を経験に変えると言い聞かせてそれまで散財してきたツケが回ってきたようでした。この状態でよく独立したなと思われるかもしれませんが、会計士にはある裏技があります。

 

それは非常勤という仕事です。会計士の方なら皆知っているかと思いますが、一般の方には馴染みのない言葉だと思います。医師の世界では当直のバイトがありますが、それと似ているような気がします。会計士のメインの仕事である監査はクライアント企業が大きいと1人では対応できません。そのため何人かの会計士でチームを組んで何日間か一緒に働くのが通常です。そして、それなりの規模の監査法人であれば何人もの会計士を常勤で雇うことができますが、小規模零細の監査法人の場合、常勤で会計士を雇い給料を払うだけの体力が無いことが多いです。そういった監査法人はピンポイントで現場作業の時にだけ会計士を日給で雇うこととなり、それを非常勤の仕事と呼んでいます。
監査法人はよく知られている四大(三大?)監査法人以外にも準大手と呼ばれる監査法人や、上場企業を対象としない監査法人などいくつもあります。ネットで調べたところ200社以上あるようでして、会計士が5人以上揃えば設立できるので設立は容易です。また、監査法人という形態にしなくとも個人で監査をしている人は大勢いまして、その人達が非常勤を募集することもあります。つまり、非常勤の仕事はあちこちに転がっているわけです。そして、3月決算が多い日本では監査の繁忙期は4~5月と決まっており、その時期は毎年会計士の需要がマックスとなります。自分の開業時期は3月でしたので、開業と同時にまず非常勤の仕事を探したのはいうまでもありません
会計士会員に毎月送られてくる冊子や、会員のための求人ホームページを駆使して何人かの方と契約し、まずは昔やっていた監査の仕事をすることとなりました。独立して自分が得た仕事ではありませんが、家計の資金繰り上贅沢は言えません。ただ、この仕事は報酬の面でも仕事の負荷の面でもとても有難いお仕事でした。具体的には、10時くらいから始まって12時から1時間しっかりとお昼を取って(多くは昼食代を出してもらえる又は弁当)17時前になるとおもむろに皆机の上を片付け始め、静かに解散するという流れです。最近の監査現場ではあまり見られることのない、古き良きクラシックスタイルです。また、仕事の内容は会計士1年目がやるような簡単な作業が多く、集中すれば実質2時間ほどで終わってしまいます。それで1日の報酬が5万円というのが相場です。初めて参加した時にはこんな世界があるんだとある意味(笑)ショックでした。そこまで野心が無い方には美味しい仕事なので、実際、非常勤の現場ではこの仕事だけを一年中やって生活している方にかなり会いました。しかし、この世界にどっぷりハマってしまっては戻れなくなりそうな、ある種麻薬のようでもあり、早く自分の仕事を獲得して独り立ちせねばと危機感も醸成されました。
少し否定的な流れになってしまいましたが、非常勤で得られたものも沢山あります。学校法人やNPOなどこれまで経験してこなかった色々な業種のクライアントを見れるので勉強になりますし、何より色々な世代、タイプの会計士の方と知り合えることが大きいです。この時に知り合い、その後も仕事の紹介だけでなくプライベートでも会うようになったりと、やはり出会いは一番の財産です。それから、監査の仕事は出張が多く、例えば工場等はプライベートで行かないような場所にありますので、そういった場所に何泊かして場末のスナックに行って、というのはかけがえのない思い出となります。
このように開業初期は非常勤にとてもお世話になりました。会計士にはこのようなセーフティーネットである程度の収入が見込めますし、独立にものすごく有利な資格だと思います。

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